魔法遣いは運命に介入する。3

さんって、過保護ですよね」
疑問形ではなく、断定な時点で、お察しである。
「唐突に何を言い出したの?」
カナエだけではないカナヲも、唐突にそんなことを言いだしたしのぶに首を傾げている。
唯一人、アオイだけはわかりますとばかりに深く頷いていた。
「あー、朝から熱烈な視線をいただいているから何かと思えば」
言われた本人は苦笑しながら、朝ご飯を取り分けている。
「まあ、さんは、凄く甘い人だから、過保護とか心配性とも言えるかもしれないけど」
カナエの言葉に、以外の全員が頷くあたり、の味方はいない。
「鬼狩りから帰ってきたら、絶対起きて待ってるし……」
最初の数回はたまたまかなと思っていた。彼もちょっと眠れなくてと言っていたし。
だけれど、毎回毎回帰ってくるたびに出迎えられれば、馬鹿でも気付く。
カナエの時も、しのぶの時も、彼は彼女たちが帰ってくるのを起きて待っているのだ。
で、帰ると同時に刀と羽織を受け取り、怪我を確認された後、風呂へ押し込まれる。着替えなどはカナヲやアオイに頼んで、脱衣場に準備済。風呂上りには少しだけ冷たくした経口補水液なるものが用意されて、風邪をひかぬようにと彼の作った温風器とやらで髪を乾かされ、疲れからウトウトした時には自室まで優しく抱っこされて運ばれる。
どこの良妻だと突っ込みを入れたい手際である。
それを一式やられた身としては、大切に思われているとはいえ、一言言いたい。
「ちゃんと寝てますよ?二人の気配が近づいてくると目が覚めるだけで」
信用できませんとしのぶに見られるが、本当のことなのだ。
「しのぶが嫌なら止めますが……」
「嫌じゃない!でも、……その、さんの負担になるのは……困るし」
「私がやりたくてやっているので、いいんですよ。それに、君たちがそれに慢心しないのも知っていますしね。昔のあいつみたいに、出迎えて当然!とか言い出したら、心の底から反省させますが」
「そんな人がいたの?」
珍しく黒い笑みを浮かべているに、カナエは驚く。それに彼が昔のことを話すのは珍しい。
「まあ、そいつの場合、そう言いながらこちらに感謝もしていたので、縁を切るとかにはなりませんでしたが。他の人には絶対に言わないようにと、出来るようになるまで、実力を持って言い含めました」
説教が肉体言語によるものだったんだろうなと言うのは、雰囲気で察せられた。
「しのぶは、さんに恩返しがしたいのね?」
「そう!……なんだけど、家のこととか全部してもらってるし、さんの好物とか、欲しいものとか知らないし」
そのおかげで、稽古や研究などお仕事に集中できるので、効率はかなり上がっていた。作業分担重要。その上、鬼狩りにも時々ついてきて、二人の補助をしてくれたりするので、どうしてやろうかと思っていたりする。
「そうね。あんまりそういう話はしたことないもの」
「俺にとっては、君たちが笑顔でいてくれることが、なによりの贈り物なんだけどね」
「……そういうところがダメなんですよ?さん、わかってます?」
「わかってないと思う」
「はい」
流れるようなカナエ、しのぶ、アオイの三連撃+頷くカナヲと三人娘。
「ぐっ……そうは言うけど、カナエだって、屋敷の皆が笑うと嬉しいでしょう?」
「それはもちろん」
「じゃあ、わかってほしいなぁ」
「……本当、どうしようかしら、この人」
困ったように笑うに、カナエは頭痛を覚えたようにこめかみを押さえる。
「姉さん、大丈夫です。まだ大丈夫です、きっと」
「頑張りましょうね、しのぶ。皆もお願いね」
「うん」
「はい」
本当にこの男を早めに何とかしないと。
蝶屋敷の面々は誓いあうように頷きあった―――

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評価

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後書&コメント

  1. 相変わらず、いつでどこかはわからないけど、蝶屋敷でのありそうなヒトコマ。

    更新がどうのと言っておきながら、休日残業しながら突発更新。
    仕事が辛くなると、現実逃避で筆がのるというやつですね。
    本当にこの後の更新予定は未定ですw
    突発で本編とは関係ないこと、書いても許してください。
    女の子はいつだって幸せにします。

    アンケートやコメントにこんなの読みたいと、是非一言。
    http://mutuki-h.x0.com/limitbreak/?page_id=1199

    コメント by くろすけ。 — 2021/06/19 @ 22:33

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Posted: 2021.06.19 鬼滅の刃 - カナエ生存ルート. / PageTOP