「さん!おはようございます!」
「お、炭治郎。元気に参加してるな。……よく、俺が来たってわかったな」
「はい。さん、しのぶさんと同じ、匂いがしますから」
炭治郎の言葉に、ギシッとの身体が固まる。
「しのぶさん、藤の花の匂いがするので、わかりやすいんですよ!」
「……そうか。これからまた訓練があるんだろう?怪我をしないようにね」
「はい!頑張ってきます!」
今日も基礎体力をつけるためと、山の中を駆け回る炭治郎を見送ったの背後から音柱が姿を現す。
「同じ匂いかー。そら、まあ、あんだけ一緒にいればなぁ。藤の匂いも移るわ」
「そうだな。これからどんどん薄まっていくだろうけどな」
「……まさか、胡蝶が解毒する覚悟を決めるとは思ってなかった」
の頭の上に腕を組んで圧し掛かりながら、天元は彼の様子を窺う。
「やっぱり知ってたな。さすが、元忍者」
「ここ一年で急に、あんだけの藤の匂いをさせるようにいなればな」
「全く。……この国の覚悟を決めた奴らは怖すぎる」
笑いながら重いぞ、と圧し掛かっていた天元を押しのける。
「一番怖い奴を見事懐柔しておいて何言ってやがる」
「懐柔したつもりはないんだけどな。やっぱり美人姉妹には笑いあっててほしいじゃないか」
「ま、派手にお前らしい」
その理由が実に彼らしいと、天元は笑う。
今日も柱稽古の様子を見て回ったは、蝶屋敷の中庭へと舞い戻る。
「お帰りなさい、さん。…?何かありましたか?」
が帰ってきたのを察知したしのぶが、部屋から顔を出す。
「……いや、その。炭治郎に」
羽織の匂いを嗅いでみるが、藤の匂いなんて微かにするかしないか程度すら感じない。
「炭治郎君に?」
「君の匂いがするって……」
「ああ、あの子の嗅覚はおかしいですよね。私がずっと怒っているって言ったのは、貴方とあの子だけです」
「待て。あいつは嗅覚で感情を判断してるのか。いや、汗なんかの分泌物で感情が判定できるとかなんとか聞いた気が……」
どんな嗅覚だよ、と叫ぶのは内心だけにしておこう。
「まあ、そういうことなら、仕方ないか。……ただいま、遅くなりました」
「行冥さんのところまで行かれたんですよね。毎日回る箇所が増えているんですから、仕方ありません」
「ああ。やっと一組目が行冥のところへたどり着いた。階級と到達順から、突入した後を考えないとな」
「一番はやっぱり獪岳君ですか?」
「ああ。さすが雷様。後は甲の面々。獪岳は元々能力は高いし。甲の面々は、この間の温泉でガッツリ鍛えたからな。明日の組でカナヲが上がってきそうだよ」
がそう言いながら差し出してきた紙には、明日にはカナヲが行冥のもとへ行くことが書かれている。
「義勇、杏寿郎、実弥の実戦形式を超えてきたんだ。だいぶ、強くなってるんだろうなぁ。師範としていかがですか?」
「カナヲの方が、私より強くなるのはわかっていましたから。ふふ。でも、まだまだ負けてあげるつもりはありませんよ?」
しのぶとしても柱としての自負がある。簡単に継子に負けるつもりはないのだ。
「やれやれ。そういう負けず嫌いところも可愛いとか、困ったものだね」
そんなことを笑って言う魔法遣いの方が、困ったものだと思われていたりする。蝶屋敷で手伝っている隠の面々は、最早『またか』という表情すらしない。
「また、そういうことを言う。この間、女の子たちに囲まれて、青くなっていた人は、言葉を選ばないと本当に大変なことになりますよ?」
「その節は、本当にありがとうございました!」
「さんが逃げ腰になっているのを見るのは楽しいですけど」
「楽しまないで。助けて。へるぷみー」
そんな事を笑いながら話す二人は裏山へ向かったのを見送った、屋敷内で働いていた隠の面々は視線を交わして力強く頷きあう。
やっぱり、あの二人。早いところ何とかしないと――――
当事者達の外堀は、ガンガンと埋められ始めていた。
順調に柱稽古突破中。
あんだけ一緒に居れば、しかたないよね。
っていうか、隠の面々は日々お疲れ様です。
きっとお館様の報告があげられてるに違いない。
私も間近で美人さん見たい!
コメント by くろすけ。 — 2022/11/25 @ 19:29