海の結婚式が無事終わり、グランマも交えて『ささやかな』パーティをすることになった。
と、聞いていたのに。
青年は目の前の人の多さに、ちょっとため息を吐きたくなった。
今日のレストランは格式のある場所だから、苦手なダークスーツに身を包んできた上に、この人の多さ。
これで視界の端にその人を捉えていなかったら、きっと回れ右をして帰っていただろう。
ゆっくりと人の間を抜けて、会話が終わったところを見計らって声を掛ける。
「グランマ、お久しぶりです」
「、よく来てくれたわね。こういう場所が苦手なのに」
引退してからはあまり会えなくなってしまったが、グランマは変わらぬ笑顔で青年を見上げた。
「グランマとあの三人のお誘いを断るなんてしませんよ」
「元気そうで安心したわ」
「グランマも、お元気そうでよかった。また遊びに行ってもいいですか?」
「勿論、いつでもいらっしゃい」
グランマは優しく微笑み、息子のような青年の腕を軽く叩いた。
「しかし、すごい人ですね。舟協会の方たちですか?」
青年は少し困惑したように、周囲を見回す。
どうも場違いな感じが否めないのだ。
しかも、グランマと親しげに話す彼には、人々から視線が突き刺さる。
「それに……アリシア達は?」
きっと彼女達の周りにも大勢の人がいるのだろうと、は周囲を見回すが、特に目立った人だかりがなくて小さく首を傾げた。
「もうそろそろ来ると思うのだけれど……。ああ、やっと到着ね」
グランマに言われて、レストランの入口を見れば。
祭典の時とは違うドレスを身に纏った三人が、そこへと現れていた。
「うわぁ」
「ほら、。エスコートをお願いね」
感嘆の声を上げる彼の背中を、グランマは軽く叩いて促す。
「はい。ちょっと行ってきます」
グランマに微笑んで、彼は人ごみを泳ぐように前に進んでいく。
一方、三大妖精と称えられる水の妖精はといえば。
「あらあら。すごい人」
「グランマとはどこかな?」
「……っていうか、向こうに見つけてもらう方が早そうだぞ。これは」
「あ、」
他の者が声を掛ける前に、三人が彼に気付いた。
三人の視線が自分に向いていることに気付いた青年は、優しい微笑を浮かべて、軽く手を上げる。
「。いつもと違う」
アテナは、彼を上から下まで眺めて、ちょっと高い位置にある彼の蒼い瞳をのぞきこんだ。
「そうですか?皆の方が雰囲気が全然違いますよ。ドレスもとてもお似合いです」
「あらあら。もとっても格好いいわ。視線を一身に集めているもの」
「とんでもない。皆さんの方が注目の的なんです。私が一人でいれば、静かなものです」
「……気付いてないってのは、凄いな」
晃は、彼に視線を向けている女性陣の報われなさに、内心で合掌した。
「あちらにグランマがお待ちです。行きましょう」
————————————————–
以上。海との結婚式後、パーティとかあったんだろうなぁという想像でした。