だが、張々に乗った音々は後ろをチラリと振り返り、青年には言えないもう一つの理由を思い出していた。
(頑張る者には無償で知恵を貸してしまうのも問題なのです)
知恵をクレクレと言う相手には冷淡な青年だったが、頑張っていて行き詰っている者にはアッサリと知恵を貸したりする。
ここの太守がどういう人物か、春蘭と風が判断するまで、彼との対面はお預けになった一面もあった。
「太守だと影響が大きいですから」
「しかたない。馬騰さんに会うまでに、もう少し礼節について勉強しておくかー」
やれやれと言いたそうな顔をしながら、はグッと大きく身体を伸ばした。
次の日、迎えに来た馬超率いる涼州軍と合流し、彼らからしてみればのんびりと目的地へと向かう。
「城壁を出たら、景色が一変したな。で、あれが万里の長城かー」
あの向こう側には、匈奴と呼ばれる異民族が支配する土地だ。
「なんともまあ、馬鹿でかいものを作ったものだね」
「お陰で蛮族どもの侵入を防ぐことが出来る。長城沿いに進めば、武威に着く」
地平線まで続く長城を見上げていたに声を掛けたのは、軽やかに馬を寄せてきた馬超だった。
「これは馬超殿。ご挨拶が遅れまして、申し訳ない。お久しぶりです」
「おう。反董卓連合以来だな。殿の噂は、西の果てまで届いてきているぞ」
馬車の上で頭を下げる青年に、馬超は楽しげに笑って話を始めた。
「どんな噂か聞くのが怖いな」
「美味いものを作れるとか、覇王曹操の愛人だとか……」
「今、聞き捨てならんものが混じったぞ」
「知らないのは、お兄さんだけなのですよー」
指折り数える馬超を止めたが、一緒に聞いていた風にトドメを刺される。
「……現実逃避するから、しばらく放っておいて」
「仕方ないですね。お昼ご飯はどうします?」
「夜は親睦を深める宴会だろ?昼は皆に任せるよ」
「そうか。夜を楽しみにしておく」
道の途中での一幕。ちょこっと削った部分。
長くなったから削除したけど、噂の部分で凹む主人公は結構気に入っているw
コメント by くろすけ。 — 2014/03/10 @ 23:58
くろすけ。さん、今晩は♪
連日の更新、ありがとうございます。
ふ、ふ、ふ、「昨日更新があったから次は何時かな?」と思いながらお邪魔した私は勝ち組w
コメント by Hiro — 2014/03/11 @ 21:34
> Hiro様
時々、こういう勢いが生まれるのが恐ろしいところですな。
久々の没原稿です。万里の長城を出してあげたかった……
コメント by くろすけ。 — 2014/03/11 @ 22:12