転校生。彼は、黒髪蒼瞳の優しげな青年だった。
「初めまして、・と言います」
「っ!?」
音をたてて立ち上がったのは、いつも落ち着き払っているルルーシュだ。
「?」
立ち上がった彼に目をやった青年は、少し驚いた表情を見せた後、その微笑を深くした。
「ルルーシュ!……元気でしたか?」
「兄上っ!?」
その叫び声で、教室内が騒然としたのも仕方ないかもしれない。
ルルーシュは椅子を倒す勢いで教室の前に立つ青年に駆け寄ると、信じられないものを見るように彼を見た。
「どうした?……私はちゃんと生きているよ」
「兄上っ」
ルルーシュは教室だということを忘れて、彼に抱きついた。
「はは。ルルーシュは昔から感激屋さんだなぁ」
誰それ。何一体。
ルルーシュの背中に腕を回して優しく叩いている青年に、全員が唖然としていた。
半強制的に生徒会室へ移動させられた青年は、目の前の弟の頭をなでていた。
「いや、大きくなったね。ルルーシュ」
「兄上こそ……よく生きて……」
「半年しか違わないのに、『兄上』はないだろう。でいいよ」
「しかし……」
「……わかったよ。好きにしなさい」
「兄様!?」
「ナナリー?立派なレディになったね」
ぎゅっと抱きしめてあげれば、ナナリーも彼の首に手を回して抱きついてくる。
「兄様もお元気そうで……」
「ま、なんとかね。……それでルルーシュ。そろそろ、そちらの方々を紹介してくれるかな?」
「あ、はい。こちらは……」
ルルーシュの紹介を、彼は一人ずつ覚えるように頷きながら聞いていた。
「なるほど。いつもルルーシュとナナリーがお世話になっています」
「兄上、今はどちらに?」
「ああ。今はまだホテル暮らしだけど、近くに家を借りようかと思ってる。二人は?」
「俺たちはここに間借りしてて…」
ルルーシュがそれだけ言ってナナリーをちらりとみた。
「それは羨ましいな。学校の隣なら遅刻も減りそうだ」
「兄様も一緒に暮らせませんか?」
ナナリーがミレイを見上げる。
「いいんじゃない?二人が三人になったところで変わんないだろうし」
「兄上……」
「願ったり叶ったりだね。また一緒に暮らそう。よろしくな、ルルーシュ。ナナリー」
嬉しそうに顔を輝かせる二人に、も嬉しそうに笑っていた。
こうして彼、・は生徒会への入会をなし崩しに決められてしまった。
…物語が始まる、三日前のことだった。
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以上。男主人公、学園へやってくる。何と言ってもカレンが登場してない点で、没。