「ふむ……」
最近、は黒い革の手帳を前に考え込む事が多い。
今は少し離れた芝生の上で転がりながら、小さく唸りながら転がっている。
そんな様子に、後輩一同は『またか』と苦笑を浮かべただけだが、新入りの女性二人は揃って首を傾げた。
「あのノートって何だろ?」
「私も同じようなノートを持ってますよ。これです」
不思議そうなランカの言葉に、ナナセは自分の鞄からノートを取り出してみせる。
「所謂アイディアノートですね。簡単なイラストだったり、イメージのメモだったりしますけど」
「へぇ……」
シェリルは改めて彼が持っているそれを見つめる。
「何か新しいものを作るんですかね?」
「そうだな。ここのとこ忙しかったし、気晴らしも兼ねて色々作りそうな雰囲気だ」
そんな後輩たちの様子に気付いたのか、が転がるのを止めてじーっと彼らを見つめてきた。
「先輩?何か思いつきましたか?」
「んー……」
ミシェルの問いかけにも、は生返事で手帳とこちらを見比べたりしている。
「今ひとつしっくり来ないんだ。困ったものだね」
頭を一つ振ると、手帳をたたんで立ち上がった。
「紅茶でいいですか?」
「ありがとう、アルト。ちょっと頭を休める事にする。砂糖2杯にミルクたっぷりで頼むよ」
なんだかんだいって優しい後輩に甘える事にした。
アルトが手早く用意してくれたちょっと温めのミルクティーを、黒髪の青年は気の抜けた表情で堪能する。
「ねぇ、、そのノート、もし良かったらなんだけど、見せてもらうとか出来る?」
「これ?」
「そう」
シェリルは駄目元で彼の手にある手帳を指差した。
後輩たちも、さすがにあの手帳は見せたりはしないだろうと思っていた。今まで誰も見たことも、見せてもらった事もない。
だから、が少し考えて答えた言葉に、全員が思わず声を上げてしまった。
「いいよ。はい」
差し出されたノートに、シェリルも目を丸くする。
「いいの?」
「勿論」
「ありがとう。じゃあ、見せてもらうわね」
中に描かれていたのは、やはりというかアクセサリーのラフスケッチが中心だった。
一番新しいページに描かれていたのは、何種類もの髪飾り。何度も直した跡や、新しく描き直したものもあるけれど、そのどれもが緩やかにカーブした髪に添えられていた。
その上、どこかの雑誌の切抜きだろうか。彼女の写真が数枚。
「?ねえ、これって……」
呼ばれた本人は生返事で目の前のプラチナブロンドに魅入っていた。
それらの意味することに気付いて、シェリルは嬉しそうに口元を綻ばせる。
ご機嫌な歌姫とまったりしている先輩を見比べ、後輩達はやれやれと軽く首を振った。
「あ」
「何か気になるものがあった?」
「……これ」
ノートの隅に猫のラフスケッチがちょこちょこ描かれていた。
「この間、会っただろう?うちの猫、ヒメだよ」
「ああ、あの子。可愛いわね」
「そうだろう。近所で生まれた子猫で、親猫さんとも仲良くさせてもらってるんだ。その縁で、うちに来てもらったんだ。また会いにおいで」
「シュークリーム……」
「美味しいミルクティも用意しよう。そっちで聞き耳を立てているアルトは、緑茶にオハギがいいかな?」
シェリルがノートに隠れて口にした呟きに笑顔で答えつつ、こちらの会話が気になって仕方ない後輩にお伺いをたてる。
「はいっ!」
「先輩、アルトだけですかー?」
「はいはい。ミシェルとルカもおいで。そちらのお二人も、散らかっててもよければ是非どうぞ。ああ、あとクランに声を掛けるのを忘れないようにね、ミシェル。俺は後で整備場に怒鳴り込まれるのは遠慮したい」
約束の日、揃ってやってきた後輩達は庭の芝生の上にシートと絨毯を敷いて、クッションに埋もれている先輩を、やれやれと半ば呆れた表情で見つめた。
「やっぱり」
「朝から天気が良いって情報でしたからね」
なんせ、彼は九割以上夢の国に足を突っ込んでいるのだから。
そのお腹の上にちょこんと座った猫がにーと声を上げて、主である青年を起こすべく両前足で押しているが反応は薄い。
「先輩、行儀が悪いですよ」
色々諦めているアルトは、黒髪の彼を上からのぞき込んで、声をかけた。
「んー。ああ、もうそんな時間かい?」
そのままの姿勢で両腕を上げて身体を伸ばした彼は、アルトに微笑み返す。
「気持ちよかったですか?」
「準備が終わって、あまりにいい天気だったからね」
「今日は庭で?」
「うん。みんなもいらっしゃい。すぐ用意するから、座って待ってて」
猫のヒメをシェリルの腕の中へ預けると、ヒメの頭を後はよろしくとばかりに撫でて、家の方へ向かっていく。
「……よろしくね?」
「にー」
どちらに任せたのか判断がつかぬまま、シェリルがヒメに挨拶するとねこ彼女も一声鳴いてくれた。
ゲームを起動する時間がないので、気分転換にBDを起動してみた結果。
やっぱり、シェリルはかわいい。
コメント by くろすけ。 — 2018/02/07 @ 18:54
くろすけ。さん、こんばんは。
恋姫の方にコメントを送信したのですが何故か入りませんでしたorz
今回はどうかな?
コメント by Hiro — 2018/02/22 @ 22:16
おお、入ったw
コメント by Hiro — 2018/02/22 @ 22:17