それは呆気なく訪れた。
なんていうか、どうして?などと考えるのも馬鹿馬鹿しくなるほどに。
「カレン……すまないが、後ろを向いてくれないか?」
シャワールームで髪を拭いていた彼は腰にタオルを巻いただけの状態で。
「は、はいっ!」
慌てて背中を向けるカレンを見て、は大きくため息を吐いた。
とりあえず、下だけでも身に着けよう。穿き終わって声を掛けるが、再び後ろを向かれてしまった。
「カレン?」
「上も着てくださいっ!」
どうやら恥ずかしいだけらしい。
その様子には漸く落ち着いた。
これはチャンスと考えるべきだろう。
全てを話して、彼女を騎士にする。
「いい機会だ」
「へ?」
「カレン」
「だ、だから、どうして着てないんですっ!?」
上半身裸のまま、後ろから彼女を抱きしめた。
がっちり腰に腕を回して、逃げ出すなど不可能にしてしまう。
「カレン?、そこにカレンがいるのか?」
「顔を見られました」
「なっ!?」
そこで素顔のままカーテンから出てくる辺りが少し抜けてる弟らしい。
「え?ル、ルルーシュ!?」
「ということで、『全部』話そうかと。ずっと考えてた事もありますし。どうでしょう?」
「……そうですね。どうせ、俺が反対しても聞いてくださらないだろうし」
「反対するんですか?」
ルルーシュはにっこりと笑う兄と、半裸の彼に抱きしめられて顔を赤くしてこちらに助けを求めるような視線を送るカレンを見比べて、カレンに言った。
「頑張れ」
「それだけっ!?」
「さすが我が弟。的確で素早い決断です」
「明日も学校はあるんですから。程々に」
「なに!?何が程々っ!?」
「了解しました。少なくとも私は行きますよ。確か、明日締め切りの書類があったはずです」
「では、私はお先に」
「ゼロッ、ルルー……ぅ…」
途切れた声に関して振り返って確認する必要を認めないルルーシュだった。ゼロの仮面の奥で、笑顔で頑固な兄に襲われている紅蓮のデヴァイサーを思い、心の中で合掌した。
「まあ、兄上に騎士が出来るのはいいことだしな」
ルルーシュは結論付け、早めに休もうと歩き出した。
「おはよう、ルルーシュ」
「あにう……」
声を掛けられ振り返ったところで、ルルーシュは思わず遠い目をしてしまった。
「ん?どうした?」
「……ものすごーく、爽やかかつ、清々しそうですね。兄上。おはようございます」
「ああ。心の重荷が半分くらいなくなって、心の栄養剤を注がれた感じだね」
「そうですか……」
重荷の半分を消し去って、栄養剤を注いだ人間はきっと今頃睡魔と疲労に襲われて深い眠りについていることだろう。ここ数日の激務を考えれば、結果オーライかもしれない。
ルルーシュは青く澄んだ空を見上げて、そう思うことにした。
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以上。
相変わらず、勢いとノリで書かれるCode/Geass.です。