「あ、おはようございます。さん!」
「おはよう、炭治郎。今日も元気だな」
ちょっと夜更かしをしたは、少し眠そうである。
「今日の朝、禰豆子が起きたみたいなんです。夜まで起きてたら、会ってもらえますか?」
「勿論。日が落ちたら、俺が会いに行く。それでいいか?」
「はい!お待ちしてます」
晩御飯を食べ終わって、医療棟の方へ足を向ければ、一つの部屋からにぎやかな声が聞こえる。
「炭治郎?」
部屋を覗き込むと、炭治郎と禰豆子だけではなく、同じ部屋の善逸と伊之助もはしゃいでいた。
「あ、さん!」
「むー!」
扉から顔を出すと、小さな塊がの足元へ駆け寄ってきた。
「禰豆子?あの夜以来だね。よく眠れた?」
ひょいっと腕に抱き上げて、嬉しそうな彼女に笑いかける。
炭治郎は、その光景が嬉しくてしかたない。
初めて会った時、何の疑問も抱かず、『鬼』の妹を抱き上げてくれた。
それが嘘じゃなかったのが、嬉しい。
「むーむー!」
禰豆子も彼が優しいのがわかるのか、ぎゅっと抱き着いて幸せそうに笑っている。
「二人とも、長男長女で頑張ってきたんだ。何かあったら、俺を頼っていいからな」
「はい、ありがとうございます!」
「む!」
禰豆子を炭治郎の寝台に降ろして、二人の頭を撫でた。
「善逸と伊之助も、禰豆子の事、よろしくな。鬼狩りは基本夜だけど、朝日が出るまで戦うことだってあるから」
女の子のためのなら命を懸けられる善逸と、炭治郎や禰豆子を子分と思っている伊之助には改めてお願いしておく。
「勿論です!」
「任せとけ!」
元気に返事をする二人の頭も撫でておく。
「むー!」
私もと空いてたの左手を、禰豆子は自分の頭に乗せる。
「ああ、ごめんな。禰豆子も炭治郎の事、頼むな?君のお兄さんは、意外と無茶苦茶をやるから」
「ん!」
任せろと、禰豆子は胸を張った。
「さん……」
「俺の薬で顎を治してなかったら、もっと治療期間が伸びてたからね?」
「そうでした!貴重な薬、ありがとうございました」
顎の怪我を治したのはの薬だと、しのぶからつい先日教えられた炭治郎は頭を下げる。
「あの時は事情がよくわかってなくて、あれくらいしか出来なくて悪かった。……あれから、怒涛の日々だけどな」
「ですよね。ただ、ここで修行できたのは、俺にとっても良かったです。明日も頑張ります!」
「お、もう結構な時間になってたな。長居して悪かった。また明日な」
「はい。禰豆子もゆっくり休もうな」
「むー」
まだ夜が始まったばかりなので、に抱き着いたまま離れたくなさそうだ。
「禰豆子。我が儘言っちゃダメだろ?」
「いや、いいよ。炭治郎さえよければ、その箱ごと今日は俺が一緒にいよう。俺はまだ起きている予定だしな。禰豆子はどうだ?」
「ん!」
賛成とばかりに禰豆子は声をあげる。
「いいんですか?」
「ああ。朝になる前に箱に入ってもらうから、それも借りていくぞ?」
「はい!禰豆子をお願いします」
禰豆子がいつも眠っている箱を借りて、は三人にお休みを告げた。
「さて、裏庭と山の方を一回りして、俺の部屋に行こうか。ちょっとは外の空気を吸いたいよね」
「むー!」
の腕の中で楽しそうな禰豆子を抱きなおして、屋敷の裏へと歩き出す。
その背中に感じる視線は、気付かなかった事にした。
「む……」
ゆっくりと一周して戻ってくると、禰豆子は眠そうに瞼を擦った。
「ああ、もう眠いかな?このまま、俺の部屋に行って箱に入ろうか」
「ん」
本来であれば鬼は睡眠を必要としないと聞いた。が、禰豆子は睡眠でその食欲を補っているようだった。
【鑑定】でも確認したので、それは間違いない。彼女の体力回復用にリジェネを練り込んだ何かを作成しようと考えながら、部屋に戻る。
「さ、禰豆子。入って」
「ん」
箱を出してあげれば、禰豆子は大人しくそこへ入っていく。
「お休み。またね」
そんなの言葉に小さく頷いて、彼女は扉を閉じた。
「さてと、……今日の晩酌と参りますか」
屋根の上に上がれば、そこでしのぶが月見をしていた。
「まだ起きてて大丈夫?もうだいぶ遅い時間だよ?」
「研究をきりのいいところまで進めてたの。さんのお陰で、稽古と研究に時間をとれるようになったから」
「そうか。役に立ってるなら良かった」
彼女から少し離れた場所に座って、はビールを一本取りだした。
「どうでした?」
「あの子が人間を襲うようになったら、泣きながら斬ることになりそう。なので、早めに人間に戻す方法を作ります。今、ちょっと開発しているお薬が特効薬になってくれるといいんですが。そのためにも上弦の鬼を探索中なんだけど」
「……本当に何やってるんですか?」
私を除け者にして?と言わんばかりに詰め寄られたので、ビールはお預けである。
「俺のあやふやな知識を元に作っているので、まだ出来るかどうかもわからない。もう少し目途が立ったら、必ず伝えるから」
「……子ども扱いして」
それでも撫でられる手を振り払ったりしない。
「子ども扱いしてたら、鬼殺がない日は夜九時には寝かしつけるよ?添い寝もしようか?」
「え?」
「徹夜なんてもっての外だからね。……それでもいい?」
頷いたりしたら間違いなく、有言実行するであろう笑顔のに、しのぶはぷるぷると首を横に振ったのだった―――
ちょっと短め。
禰豆子と再会。そろそろ炭治郎の怪我が治りそう。
屋根の上では晩酌ですよね。
時々おつまみを持っていかれています。誰とは言いませんが。
チーズとかナッツとか好きそうなイメージです。
私個人はビールには断然ソーセージとジャガイモ派です。
コメント by くろすけ。 — 2021/05/01 @ 13:04