魔法遣いは自重しない。18

明日から鬼殺へ向かうという事で、寝る前に少し話をしておこうと、は炭治郎たちの部屋に顔をだした。
も一緒に行くんだよなっ!?」
「ああ。ご飯に関しては安心して任せてくれ。火加減は炭治郎の方が巧いがな」
の周りをグルグル回っている伊之助に、彼は笑いかける。
「炭治郎と善逸もよろしくな」
「はい!」
「勿論です!」
に呼ばれた二人は、嬉しそうに頷く。
「むー」
私も、とばかりに、禰豆子が椅子に座ったの足に抱き着いた。
「勿論、禰豆子もよろしく」
禰豆子を抱き上げれば、彼女はぎゅっと抱き着いてくる。
「決して無理だけはしない事。俺の渡した装備品は身に着けてる?」
「おう。これ、物凄くいい感じがする」
靴を嫌がる伊之助は、特製のサンダルである。
「いいんですか?俺達だけ、こんなもの貰って」
「ああ、きちんと耀哉の許可も貰ってるし。弟みたいに思ってるお前らが怪我するのは、俺が嫌」
はこの四人とカナヲに、特別装備品を渡していた。
『柱』と同じ装備品を彼らが手にしているのは、彼の自重の無さ故だ。
身内認定した人間に、目の前の男は滅茶苦茶甘いのだと、彼と付き合いのある人たちは全員認識していた。その辺りを、しのぶがきっちりと彼らに伝えている。
耀哉に一筆貰っておいた方がいいと、に告げたのもしのぶだった。
彼女の継子であるカナヲも含めて、他の隊士から妬み嫉みが来ないとも限らないのである。
「まあ、強化隊服は階級が上から順に配っているんだし。そのほか諸々で、隊に滅茶苦茶貢献している俺のちょっとした我が儘くらい聞くべき」
何かあったのだろうか。はヤサグレた表情を浮かべる。
「むー」
よしよしと禰豆子に撫でられて、は一瞬目を丸くしたが、納得したように頷いた。
「ありがとう、禰豆子。この国の子は優しいな」
彼女の背中をぽんぽんと叩いて炭治郎の隣に降ろすと、はまた明日なと部屋を出ていく。

「じゃあ、行ってきます」
「はい。気を付けて」
「お土産買ってくるよ」
蝶屋敷の面々に見送られてが、少し先で待つ炭治郎たちと共に歩き出す。
その後ろ姿を見つめながら、しのぶは小さくため息を吐いた。
「師範?」
カナヲがそれに気づいて首を傾げる。
さんが私以外と鬼殺へ出るのは初めてだなと思って」
「そういえば……何事もなく帰ってきてくれるといいですね」
「まあ、あの人がボコボコにされるのも、想像しにくいんですけど」
アオイに答えるしのぶの言葉に、カナヲは大きく頷いて、つい先日の事を思い出していた。
御館様の指示で稽古に来たという、炎柱と水柱を相手に裏山で大乱闘を繰り広げた。近接戦闘と中距離戦闘の『柱』の連携攻撃の隙間を突いて、上弦の力量を考えれば、連携で戦闘を一度もしたことないとか馬鹿の所業、と彼は笑っていた。
戦術的撤退とか知ってるか?逃げるんじゃなくて、有利な場所へ移動させるんだと、山の地形を利用して『柱』の面々を地面にたたきつけるなど、訓練に関しては、男女関係なくボコボコにしていた。が、後でしのぶと蜜璃と無一郎には、特製のおやつが用意されていたりするのが、実にあの人らしい。
満身創痍の風柱の前で、おはぎを美味しそうに食べるのは、単なる嫌がらせだと笑っていた彼が、帰りのお土産の中にちゃんと実弥の分を多めに用意していた事を皆が知っている。
「早く、帰ってこないかな……」
思わず呟いてしまったカナヲに、しのぶとアオイが目を丸くした。
「ふふ……カナヲは、本当にあの人に懐いてしまったのね」
カナヲが初めてこの屋敷に来た時からは、考えられないほどの成長にしのぶが幸せそうに笑った。

さんは、しのぶさんと付き合っているんですか?」
目的地へと歩いていく中で、選んだ話題がよりによってその話題かと、は思わず遠くへ視線を向けた。
「……善逸、二度とその件に関して口にするな。特にあの子の前で言ったら、二度と普通の薬は飲めなくなるからね」
「え?……炭治郎と、伊之助もどうしたんだよ!?」
善逸を振り返らずにが告げた言葉と共に顔色を悪くしていく炭治郎と伊之助に、善逸が驚愕の声をあげる。
「善逸は育手の人に会いに行ってて居なかったから、あの場にはいなかったんだよなぁ。先日、同じ事を『水柱』様が、あの子の前で口にしてな……いいな?命が惜しいなら、絶対にその件は二度と口にするなよ?俺は警告はしたぞ?」
「な、なにがあったんですか?」
「あの子の機嫌を直すために、俺は人身御供扱いだったとだけ、言っておく」
カナヲとアオイも顔色を真っ青にして、に色んなことを頼んできたのだ。
「義勇さん、三日ほど寝込んだって……」
「半々羽織、イキテテヨカッタ……」
「本当に何があったんだよっ!?」
そんなことを話しながら、四人は目的の地へたどり着く。

「蒸気機関車か。大正浪漫だね」
黒塗りの大きな塊が、彼らの目の前に鎮座していた―――

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後書&コメント

  1. ちょっと短めですが、無限列車編開始になりました。
    カナヲが懐いてくれていて、オジサンは嬉しい。
    来週更新できるかは、戦闘描写になります。
    早めに帰りたいので、きっと戦闘描写は書かれた後に削除対象になるんですけどね。
    列車編が終われば、またしばらくいちゃいちゃ溺愛コースの予定です。

    コメント by くろすけ。 — 2021/05/29 @ 21:13

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Posted: 2021.05.29 鬼滅の刃. / PageTOP