「さて、言い訳があるなら、聞いてあげようかな? 一応…ね」
ニッコリ。その擬音がぴったりと当てはまる笑顔を浮かべたの前で、ルルーシュ、スザク、リヴァルは顔色を真っ青に変えた。
今、彼らの前には、が今日の為にと作ってきたパンプキンパイが入った箱が置かれていた。今回もきっと、その腕前を遺憾なく発揮した美味しいパイが入っている。それを味わうことを、彼らも楽しみにしていたのだ。そう、少し前までは。
今は見る影も無く無残に潰れていた。
「……さて、さっさと聞かせてもらおう。女の子達が楽しみにしていたパイを駄目にした挙句、飲み頃にまで冷やしていた俺のとっておきを頭から掛けてくれるという所業をしてくれた理由をね」
両腕を組んで三人の前に立つの黒髪からは、少し甘めのシャンパンの香りが立ち昇っていた。
「クシュッ」
深夜、パーシヴァルの整備をしていたの口から、くしゃみが出た。
「?体調管理もパイロットの仕事のうちだよ?」
「……不可抗力だ」
紅蓮弐式の陰で笑いをこらえているカレンを見つけ、は不機嫌そうにラクシャータに答える。
「まあ、早めに薬飲んで休みな。あんたに何かあったら、色々困る奴が出てくるからね」
「了解した。訓練は明日以降に回す」
「はいよ。空き時間は他の奴らに使わせるよ」
ラクシャータを見送って、彼は大きくため息を吐いた。
「カレン。笑いたいなら、笑っていいんだぞ」
「二時間も三人を苛めていたからね」
他に人がいないのを確認して、カレンは彼の側へ歩み寄る。口元にはまだ消しきれない笑いが残っている。
「今日は早く帰って、薬を飲んで寝ましょうか」
「飲みたくない」
「…」
まるで子供のような彼の言葉に、カレンは少し呆れたように見上げて、彼女の顔色がさっと色を変えた。
「しかし、カレンが飲ませてくれるなら、飲まないこともない」
放課後、学園で見た笑顔がそこにあった。
「モチロン、口移しで飲ませてくれるんだよな?」
カレンが彼に屈服するまで、あとどのくらい…?