V型感染症に冒されているはずの彼女は、彼の目の前で楽しそうにウィンドウショッピングを楽しんでいて。
「病人なのに」
そう思わず彼は呟いていた。
「……何? 貴方も私を病院のベッドに縛り付けたいの?」
その一言を聞きとがめたシェリルは、彼女より頭半分高い青年を見上げた。
「ああ、そういう意味ではないんだ」
は彼女の手を取った。手を繋いでいないと、どこかへ飛んでいきそうなのだから、このくらいは認めてもらおう。
「……じゃあ、何?」
軽く唇を尖らせて拗ねるシェリルに、彼は優しく微笑んだ。
「甘えてもらえないのは、寂しいなぁと思って」
「……」
の微笑みに、シェリルは言葉をなくしていた。どうして、この青年は自分を甘やかすのがこうも得意なのだろうか。
彼女は彼の腕に抱きついて泣きそうになるのを隠した。今、彼に甘えてしまったら、立てなくなりそうだったから。
「大丈夫。君が1人で立つのが辛くなったら、手を貸したいと願っているから。だから、私は君の傍にいるんだ。それに私に甘えても、シェリルは自分の足で立っていられるよ。君は弱いかもしれないけど、強くて優しいから」
どうして、このひとは自分を見透かしてしまうのだろうか。
「うん。ありがとう、」
今だけはこの腕のぬくもりに甘えていたい。そうシェリルは思った。
病人なのに (macrossF:シェリル)
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Posted: 2009.01.21 短編にも満たない諸々。. / PageTOP