「今日もお疲れさまでしたー」
お月様にビール缶を掲げて、乾杯する。
今日のおつまみは、ビーフジャーキーを一盛りとチーズとクルミの燻製を用意してある。
まあ、彼のポケットの中には山海の珍味がてんこ盛りで用意されているのだが。
「また一人で晩酌ですか?」
音もなく屋根にあがってきたしのぶに、オジサンももう驚いたりはしない。
「おや、みつかってしまいましたか。一緒にいかがか?」
がもう手際よくクッションを取り出して、ポンポンと叩けば、彼女も仕方ないですねと言わんばかりの表情で座ってくれる。
差し出された切子に注がれたものを一嗅ぎして、隣の魔法遣いをジト目で見てしまった。
ジト目を向けられたは、笑ってグラスの中身を告げる。
「梅シロップの炭酸水割です」
「自分だけお酒……」
「お酒と煙草は二十歳になってから。煙草は二十歳になってもやってほしくないですけど」
煙草を辞めた後もせき込んでいた父を思い出すと、肺が命の呼吸の使い手が煙草やるとか馬鹿か阿呆かと思う。
「むう……」
二人きりの時には、ちょっとむくれたりして子供っぽいところも見せてくれるのが、オジサン的には非常に嬉しい。
「宇髄さんや冨岡さん達とは飲んでるって言うし」
「まあ、あいつらは二十歳超えてるし」
なので、蜜璃と無一郎とも呑んでない。
「ズルい」
「二十歳になったら、俺のとっておきをご馳走しますって。あいつらには出すのも惜しい一品ですよ」
「……蜜璃さんとは?」
「俺、小芭内に闇討ちされると思う」
闇討ちされるのは兎も角、鏑丸に冷たくされるのは悲しい。
「それは確かに。あの二人も複雑ですからね」
「何か進展ないの?鴉でやりとりしてるんでしょ?」
「誰から聞いたんですか?」
「え?艶からですけど」
艶だけではない。鎹鴉はに世間一般の情報を渡してくれる貴重な相手なのだ。
「一度、艶とはキチンとお話しする必要がありそうですね」
「俺が君が楽しそうにしてたことを聞いたんだ。そしたら、蜜璃と手紙のやり取りを楽しそうにしてるって教えてくれたんだよ。だから、艶を怒らないで」
そういう事なら仕方ない。仕方がないけど、頭を撫でてくるの脇腹は突いておく。
「この間、初めて名前を呼んでもらえたと、蜜璃さんから連絡をもらいました」
「ほう。それはそれは」
小芭内をニヤニヤと見る理由が出来たなどと考える魔法遣いを、しのぶはジト目で見つめる。
「あんまり揶揄うと、鏑丸にかまれますよ」
「それは困るな。自重しよう」
何気ないこんなやり取りが出来る時間が楽しい。
「クルミ、好き?」
「そうですね。栄養価も高いですし」
選んでいるつもりはなかったが、先ほどからおつまみの中でクルミの減りが早い。
「じゃあ、色々食べ比べしてみようか」
は取り出した皿に、アーモンドや落花生、マカダミアナッツ、ピスタチオなどを出していく。
見たこともない種に目を丸くしながら、一つ手に取って食べてみれば、味わいも違ってとても楽しい。
「海外のものですか?」
「うん。これとか、チョコで包むと美味しい。かぼちゃの種とかも好きなんだけどね。パンに練りこんだり」
ヒマワリの種をこれでもかと練り込んだドイツの黒パンが懐かしい。
「こそっと、色々回ってみようかな」
「……何を考えているかはわかりませんが、止めてください」
思わず彼女の口元にアーモンドチョコを運んでいたの手を掴んでしまっていた。
「美味しいもの食べたくない?」
「食べなくない訳ではないですけど、国内で生産した方が気軽に食べられませんか?」
「その手があったか」
この後、北の大地などの開拓が進んで、広がっていく所有地に耀哉が呆れたため息を吐くことになるのは、そう遠くない未来―――
ちょっと短いですがが、時折屋根の上で晩酌してる模様。
屋敷の皆も気づいていますが、邪魔はしません。馬に蹴られるのは嫌らしいです。
可愛いなぁ。マカダミアナッツチョコも好きそう。
未来の約束を受け入れてくれるのが、オジサン的幸せ。
問題は、食べさせてもらうことを既に疑問に思ってない蟲柱様ではないでしょうか。
しばらくイチャイチャ回が続くといいなぁ(超希望)
コメント by くろすけ。 — 2021/10/02 @ 20:57