「これはまた、結構な怪我をしたね。炭治郎」
「諒、さん……禰豆子が」
「うん。太陽、克服しちゃったな」
諒は炭治郎の隣にあぐらで座って、朝日の元で禰豆子を抱きかかえる炭治郎と視線を合わせる。
「……無惨は間違いなく、禰豆子を狙ってくる。ここからが正念場だ。あと少し、手伝ってくれ」
「はい!」
「とりあえず、これ飲んで、重傷は治そうか。後は、焼肉大会で食って治そう」
「任せてください!」
渡された水薬を一気飲みした炭治郎は、お肉!と目を輝かせる。
「焼きおにぎりも頼む」
「はい!」
「あー!」
兄・炭治郎と話している諒に、小さくなった禰豆子が抱き着いてくる。
「一緒に日向ぼっこが出来るのは嬉しいな。もう少ししたら人間に戻してあげられるから。そしたら、禰豆子も一緒に美味しいモノ食べような」
そんなことを話しているところへ、柱達が揃ってやってくる。
「禰豆子ちゃん!」
満面の笑顔で駆け寄る蜜璃に、禰豆子も嬉しそうに抱き着く。
その隣で苦虫を噛み潰したような表情の小芭内を宥める白蛇も、いつものことだ。
その後ろから飛び出たのは無一郎で、諒の背中に覆い被さりながら、炭治郎と諒に戦闘の報告をしてくる。
「記憶が戻ったみたいだな、無一郎」
「うん!諒と炭治郎のお陰だよ」
「俺らは切っ掛けに過ぎない。……よく頑張ったな、無一郎。さすが【無限】の無一郎」
諒と炭治郎に抱き着いてくる彼に、こういうところは子供らしくて、弟気質なんだよねと諒は笑う。
「お疲れ様。そっちはどうだった?」
最後にゆっくりとカナヲと歩いてきたしのぶに声を掛ける。
「呼吸さえ保持できれば相手ではありませんでしたね。毒も諒さんの薬があれば即解毒されましたし」
「そうか。無事なら良かった」
「まあ、お任せされましたので」
「ありがとう。カナヲもお疲れ様。ご褒美に試作品の飴ちゃんをあげよう。ラムネ味だよ」
カナヲだけでなく、炭治郎や無一郎、玄弥といったお子様メンバーに飴やキャラメル、チョコなどを渡していく。
「私にはないんですか?ご褒美」
するりと隣に座ったしのぶの言葉に、思わず固まってしまった諒は悪くないと思う。
美人に上目遣いでご褒美をオネダリされたのである。身悶えしてもいいはずだ。
「ご褒美かー」
流石にお子様と同じものは拙かろう。
「特別だよ?」
そういって差し出したのは、チョコボンボン。
「ウィスキーがちょっと入っている大人のお菓子だね。お酒が入っているから、十八歳未満はダメ」
いいなーと見つめてくる子供組には、代わりに特別だよとコーラ風味の飴玉を一個ずつ渡しておく。
「さ、里へ帰ろうか。明日の朝には迎えが来るから、その準備はしておくようにね」
「はーい」
引率の先生になった気分で、子供達に声を掛ける。
蜜璃が子供たちに混じって返事をしていたのは、見なかったことにした。
その後の宴会は一言で表すと、【どんちゃん騒ぎ】であった事だけ、ここに記しておく。
そんなどんちゃん騒ぎの夜、ふと目が覚めて縁側に出たしのぶは、そこに座る諒を見つけて声を掛けた。
「諒さん?」
「おや?目が覚めちゃった?」
声を掛けられた諒は、ちょっと眠そうな顔で彼女を見上げる。
「諒さんこそ、どうしたんですか?」
「んー。今後の展開を考えて、どうしたものかと」
「悩んでも仕方なくないですか?」
顎に手を当てて首を傾げる諒の隣に座る。
「まあ、そうなんだけれどね。……夜は冷えるから、これを」
愛用の羽織を彼女にかけておく。
「実際、上弦と戦ってどうだった?」
「貴方の支援があったお陰で、そこまでの脅威は感じませんでしたね」
「そうか。まあ、柱全員が上弦の参と対等に戦えるようになっている事を考えれば、妥当なところか。だが、残りは上弦三人と、諸悪の根源だからな」
今回のように、諒がいる場合といない場合の支援体制に格差が生じるのは仕方がないとはいえ、対策くらいはしておきたい。
「諒さん」
「ん?」
「今日、考えるのは止めましょう。もう夜も遅いですし、明日もあります。御館様と話してみてはいかがですか?」
しのぶは立ち上がって、諒に手を差し出した。
「そうだね。寝ぼけた頭で考えても仕方ない。また明日考えよう」
差し出された彼女の手を取り、諒も立ち上がる。
「あと、もう少し。頑張るとしましょうか」
「ええ。やっとここまで来たんですから、きっちり終わらせましょう」
拳を握るしのぶに、諒は笑って彼女の頭を撫でた。
「おやすみなさい、しのぶ。良い夢を」
その後、部屋に戻ったしのぶが、耳まで真っ赤にして彼の羽織に顔を埋めていたのを知っているのは、一緒の部屋に泊まっていたカナヲだけである―――
あけましておめでとうございます。
今年も引き続きよろしくお願いいたします。
短めですが、キリが良いところまで。
この後は蝶屋敷に帰って、産屋敷襲来に向けて罠を仕掛けるなどなど日常回になる予定です。
ウィスキーボンボンを食べた後は、各自ご想像ください。
個人的には、素が出てきて、やきもちとか焼いてくれると滅茶苦茶嬉しいです。
部屋に戻った後、カナヲにめっちゃ心配されたり、イチやサンに大丈夫?って覗き込まれたりしたらしいです。
コメント by くろすけ。 — 2022/01/08 @ 18:21