触れてくる手のひらが冷たくて、気持ちよくて、シェリルはゆっくりと瞳を開いた。
「……起こした?」
彼の心配そうな声に、ゆるく首を振ることで答える。
喉が渇いたことを伝えたいのに、声がでない。
「スポーツドリンクでいいかな?」
それでも、彼女の視線に気付いた彼は優しく笑って、用意していたそれを手渡してくれた。
少し冷たくて、それがとても美味しい。
「うん。少し熱も下がってる」
体温計を見て、安堵のため息をつく彼に、シェリルは小さく笑った。
朝起きて、彼女が熱を出したと知った時の青年の様子を思い出したのだ。
「シェリル?」
「って心配性よね」
楽しそうに笑う彼女に、は一瞬目を丸くした後、困ったように苦笑した。
「君限定だよ」
その言葉に、シェリルは温かいような、くすぐったいような気持ちになるのだった。
「今の気持ちを歌にしてみたいわ」
「なら、なおのこと早く治して欲しいものだね」
今にもノートを手にしそうなシェリルから空になったコップを取り上げて、布団の中に逆戻りさせる。
「食欲があるなら、何か果物を用意するが?」
「…リンゴがいいわ。って、時々お母さんみたい。私はあんまり覚えていないけど」
シェリルの言葉に、もう一度彼は苦笑を浮かべた。
「お母さんはこんなことはしない」
横になった彼女の唇に口付けを落として、は台所へ向かった。
お皿にキレイに並べられたウサギさんリンゴに、シェリルが目を輝かせるまで、あと十分。
風邪引きにはウサギさんリンゴと信じて疑っていない主人公。
地獄の年度末進行が終了して、漸く帰ってきました。
エイプリルフールですが、特にイベントはありません(笑)
コメント by くろすけ。 — 2009/04/01 @ 18:31