「アリシア、温かい生姜湯を用意してきたんだけれど飲めるかな?」
掛けられた声に視線を天井から動かすと、そこには彼女の大切な青年が立っていた。
「ありがとう、。いただくわ」
「ちょっと蜂蜜を多めにしておいたよ」
ゆっくりと身体を起こす彼女を手伝って、はマグカップを手渡す。
「まだ熱いから気をつけて」
「うふふ…」
「?」
渡されたマグカップを両手で包み込んで笑う彼女に、ベッドに座った青年は小さく首を傾げた。
「こんな時間もいいなぁって思って」
「まあ、私としても君とノンビリ過ごせるのは嬉しいんだけれどね。きっと舟協会の人たちは、お星様にも願いをかけてるはずだよ?」
自分用に持ってきたカフェラテに口をつける彼を、アリシアは優しい目で見つめる。
「ねぇ、。風邪が治ったら、貴方としたいことがあるの」
「何?」
「あのね、一緒に写真を撮ってほしいのだけれど…」
今この状態で彼に頼むのがズルイということは、彼女にもわかっている。それでも、彼と一緒の写真が欲しかったのだ。
地球からやってきた青年は、あまり写真を持っていない。子供の頃から双子の片割れにばかり注目が集まった結果、彼は今でも写真を撮られることを苦手としているらしい。
「ダメ、かしら?」
アリシアのお願いに、は困ったように笑った。
「他ならぬ君の頼みだからね。でも、他の人には見せない事。それが守れるなら、うつしてもいいよ?」
彼の告げた条件にアリシアは笑って頷く。
「勿論、私だけの宝物にするわ」
他愛のない話をしながら、生姜湯を飲み干したアリシアは再びベッドに横になる。
「ねえ、。さっきの約束……」
「アリシアが治ったら、ね。良い天気の日に必ず」
だから早く良くなって、と優しく髪を撫でる彼の手を感じながら、アリシアは目を閉じた。
数日後、アリシアの部屋に新しいフォトフレームが一つ増えた事を知っているのは、そこに写った二人だけ。
漢字でないのを良いことに(笑)
ベタなネタも考えたんですが、ね。
コメント by くろすけ。 — 2009/07/22 @ 01:22