「作ってみたが……」
二着の服を前に、は頭を抱えていた。
「とりあえず、春蘭と秋蘭を呼びに行くか……」
青年が出て行った部屋に、入れ違いでやってきた人物があった。
「?」
視線の先には、彼女のために誂えたような服が二着。
「これは……?」
その人物、華琳はにやりと笑った。
「一応、二人に見て貰ってから、どうするか判断しようかと思って」
「ほほう。そういう事は良い出来なのだな」
「まあ、な……」
縫製は反則技だし。
「しかし、よく華琳様の服の大きさがわかったな」
「……見ればだいたいの大きさはわかるだろ」
同調開始しましたとは言えない。工房で夜な夜な人型模型を錬成しては、微調整を繰り返した事も秘密にしている。
「それよりもだな…」
「何だ。歯切れの悪い」
「……まあ、見ればわかるか。悪のりして小道具まで作ったのは、拙かったと反省しているんだ」
そう言いつつ開けた扉を瞬間で閉じた。
扉に額を当てて、苦渋に満ちた表情を浮かべる。
「後は三人で堪能してくれ!俺は仕事を思いついたから。じゃな!」
は春蘭と秋蘭にだけ聞こえるように言うと、脱兎のごとく走って、廊下の角に消えていった。
「……何だというのだ、いったい」
「うむ。あのが、本気で走るとは珍しい」
首を傾げた二人が扉を開けると。
「あら?貴女達もいたの?」
[軍服 Ver.]
軍帽と服、それとヒールのある革製ブーツ。そして、が悪のりしたという小物である鞭を手に、我らが覇王様が仁王立ちしていた。
少し軍帽を傾けている辺りは、特に反則だった。
「も居たでしょう?」
二人の方へ歩み寄りながら、華琳は妖艶に微笑みを浮かべる。
「春蘭、秋蘭」
「はっ!申し訳ありません。取り逃がしました」
が聞けば、突っ込み所満載の台詞だった。
「ご命令とあれば、見つけて参りますが」
「……まあ、いいわ。夜には戻ってくるでしょう」
[ゴスロリ Ver.]
黒を基調としたその服をまとった、まるでアンティークドールのようなその人が、寝台に優雅に脚を組んで座っていた。
「は?」
「は?…はっ。先程凄い勢いで走って行きました。呼んで参りましょうか?」
「逃げたわね。……どうかしら?」
「良くお似合いです、華琳様!」
スカートの裾を摘んでみせる主に、春蘭はとろけきった顔で答えた。
工房へ逃げ込んだは、こっそり近くの森から引いてある水に頭を突っ込んだ。
蛇口も付いたそれは、下水道も完備した時代を超越した代物だったが、今は冷水を吐き出し、青年の頭を冷やすだけの道具だった。
「全く……危うく首が泣き別れするところだった」
上半身がずぶ濡れになったところで、はため息を吐いて、床に座り込んだ。
「仕事って聞いてたのに……失敗した。俺、なんであんなの作ろうと思ったんだろう」
後悔先に立たず。その言葉の意味を、嫌と言うほど教えられた瞬間となった。
「……寝よう。うん、そうしよう」
は濡れた服を放り出すと、仮眠用に置いてあるソファに寝転がった。
現実逃避。この言葉の必要性は、常日頃感じているので、問題はない。
はぐったりと疲れ切った様子で、目を閉じた。
夜、食堂に顔を出したが、夏候両将軍に左右から挟まれ、連行された後のことを知る者は、彼女達と彼女の主のみ。
ただ、その夜、天の御遣いVS両将軍による本気の鬼ごっこが執り行われたことだけは、周知の事実である……
勢いとノリで書いてみました。
苦情は一切受け付けられません。
服はお好きな方を選んでくださいませ。
コメント by くろすけ。 — 2010/09/17 @ 00:16
鞭と軍服…イイッ!
スミマセン自重出来そうに無いので一言だけで失礼します
コメント by 涼斗 — 2010/09/17 @ 21:23
>涼斗様
いいえ、その一言で十分ですとも。
……主人公も逃げ出しますよねー。
コメント by くろすけ。 — 2010/09/18 @ 00:26
本気の鬼ごっこで逃げ切れた時点で夏候両将軍から逃げ切った主人公に敬礼!!
桂花は軍服時にあった鞭でいじめられるんですねわかりますww
コメント by ヨッシー喜三郎 — 2010/09/18 @ 03:26
体型的な意味でのゴスロリと、性格的な意味での軍服。素晴らしい!
ここは、マクロスFもあり、ギアスもありとネタが豊富ですね。
最近マクロスFにハマりまして、アルティメットフロンティアが楽しいです。
コメント by エクシア — 2010/09/18 @ 16:55
>ヨッシー喜三郎様
コメントありがとうございます。
いやー、本気で全力で逃げましたよー。
ヘイスト、スロウとか錬金術で壁を分解・再構成とか。
最後の方には、生きてる俺万歳、ですとも。
桂花は楽しめる服だろうなぁと、私も思いました……
>エクシア様
コメントありがとうございます。
いや、書いていてどちらがいいかなーと考えて、あんな書き方になりました。
また来て頂けるとうれしいです。
コメント by くろすけ。 — 2010/09/19 @ 18:55
キタキタキタ~~!脳内ビューにゴスロリ華琳様が!!
何時もは颯爽と肩で風を切って歩く覇王様が、私の脳内では内股でモジモジしている光景が…
軍服華琳様も真っ赤なルージュで妖艶に笑うビューが…
可憐さと妖艶さが混在する覇王様最高でした!!
コメント by 蒼空 — 2010/09/21 @ 01:07
自分のコメントがちょっとおかしな文面になってた・・・訂正版ですww
本気の鬼ごっこで夏候両将軍から逃げ切った時点で一般人じゃねぇぜ真田君!
逃げ切れた君に敬礼ww
でした・・・書くところがちょっと抜けてましたね、申し訳ない
コメント by ヨッシー喜三郎 — 2010/09/21 @ 16:07
>蒼空様
想像が上手くいったようで何よりです。
なんていうか、覇王様相手だと、この二つは外せないっ!
と思ったんですが、皆さん食いつき良すぎです(笑)
またお暇な時にでもお越しくださいませー。
>ヨッシー喜三郎様
私が忘れそうですが、一応、最強主人公ものなんですよね。この話……
こういうところで地味にチートを発揮している主人公です(笑)
コメント by くろすけ。 — 2010/09/22 @ 13:12