その日もいい天気で、彼は屋根の上で蒼く広がる空を見上げていた。
「ああ、旅をしたいなー」
降り注ぐ日差しの中、彼は大きく身体を伸ばした。
「?」
「あれ? 夜一さん? どうしたんです?」
振り返れば、一人の女性が立っていた。
「お主と同じじゃ。ひなたぼっこじゃよ」
彼女はニコリと笑うと、彼の隣に座る。
「また空を眺めておったのか?」
「ええ。いい天気でしたから」
「相変わらずじゃな」
「平和で何よりです」
は屋根の上で大の字だ。
その様子を見つめ、夜一は小さく笑った。
尸魂界の中でも彼に勝てる者はそう多くない。
圧倒的なまでの戦闘力を誇るはずだが、そうは見えない。
「退屈か?」
「……そうですねー。書類に埋もれる生活は嫌ですねー」
「お主はつかみ所がないの。まるで浦原のようじゃ」
「うわ、よりにもよってあの人ですか? もう少しいい例えないですか? 雲みたいとか」
「雲に失礼であろう」
「……そうですねー」
「そう拗ねるでない」
ゴロリと背を向けた彼に苦笑し、ゆっくりと近寄る。
「家へ来い。とっておきの和菓子を食わせてやる」
その髪を優しく撫でながら優しく言えば、青年は人を魅了するその微笑で彼女を見上げた。
「しかたありません。買収されてあげます」
「うむ。よろしく頼む」
夜一の返事に青年は軽やかに身を起こし、ぐっと大きく両手を天に突き上げる。
その背中に、夜一はまるで突き飛ばすような勢いで抱きついた。
「う、わっ!? よ、夜一さん!?」
背中から回した手をぎゅっと握られる。
大きな手。夜一の手などすっぽりと収まってしまう。
「買収ついでじゃ。家まで背負ってゆけ」
「はいはい。夜一さんって、意外と子供っぽいですよね」
「一言余計じゃ」
彼女が彼の大きな背中に乗ると、フワリと青年は屋根を蹴って飛び出した。
いつか、旅に出たいと言う彼を置いて、彼女が旅に出ることになるだろう。
「お主は恨むかの……?」
「え? 何か?」
「もし、私がお主より先に旅に出たら、お主は恨むか?」
「はぁ? 何故ですか?」
青年は前を見たまま、呆れたように言った。
「どうして、貴女を恨むんです? 置いて行ったから? そんな事恨んだりしませんよ。羨ましがったとしてもね。それに……」
「それに、なんじゃ?」
「二度と会えないというわけではない」
彼は力強く言い切った。
「再会した時の土産話を楽しみにしています。色んな体験をしてきてください」
「……うむ。楽しみにしておれ」
夜一はぎゅっとの背中にしがみついた。
その温もりを忘れぬように。
Bleach.も美人さんが多くて、実は凄く好きです。
コメント by くろすけ。 — 2011/01/29 @ 00:33
夜一さんの過去っていったらキャラの性格を扱うのに便利ですよね
組織のトップクラス
現在との差による回想
ゲームオリジナル主人公でも夜一さん使われてましたし
そして自分は現世組(ウルル&花梨)が大好きです
コメント by 涼斗 — 2011/01/29 @ 02:27
コメントありがとうございます。
夜一さん、いいですよね。黒猫さん……。
死神さんの黒い着物とか、いいですよね。
コメント by くろすけ。 — 2011/01/29 @ 02:37
お姐さんキャラが大好物な小生としましては、ブリーチは凄く好きな漫画です。
その中でも夜一さんが一等好きなんで、是非ともカテゴリーにブリーチをば!!
コメント by 蒼空 — 2011/01/30 @ 18:28
>蒼空様
これ以上シリーズを増やす予定は今のところないんですよ。
せめて、今のものがどれか終了するとか、Bleachが終わってストーリーが終わるとか。
ジャンプの定番なんですが、強さのインフレって苦手なんですよね。
それを考えると、初期のあたりが一番好きかもしれません。
コメント by くろすけ。 — 2011/02/01 @ 00:56